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恭太は、大和との電話口で、瑠羽がウタを失った時の事、そして、蓮との出会いを語った。 時折、相槌を挟みながらも、終始、大和は彼の話を黙ったまま聞いていた。 「いつでも明るくて、いつも笑ってて。 時間が解決してくれるまで無難に過ごそうと思ってた俺達にとって、蓮は確実に光を与えてくれてたんです。 なのに… そんな蓮の想いを、軽視し過ぎてたのかもしれません。 俺達も…瑠羽も…。」 瑠羽がこれまでに近い感情でステージに立てる様になった頃から、蓮は彼女への愛情を全面に出す様になっていった。 1度目の告白。 瑠羽は、ありがとうと、嬉しさも見せたが、少しだけ困った様に眉を下げ、ウタへの想いを告げ、丁寧に断った。 それでも、蓮は変わらずライブに訪れ、次第に、彼も仲間の1人の様になっていった。 蓮の瑠羽への想いはブレる事はなく、その後も定期的に想いを告げていた。 初めの頃は、瑠羽も真摯に受け止めていたが、あまりにもオープンな愛情表現に、いつしか、それが日常の様な、まるで挨拶的な感覚に陥っていた。 蓮からしてみれば、いつでも本気で、振り向いてくれない悲しみや、仕事が順調になればなる程、会えなくなる焦りがあったのだろう。 それを、受け止めて、理解しようとしていなかった。 だからと言って、今回の件が仕方ない事として許される訳では無い。 それでも、自分達にも責められる部分はあり、友人としての想いから、蓮の事を心配し、何か出来る事はないかと、考えていた。 大和は、恭太の声に耳を傾けながら、静かに目を閉じた。 瑠羽にしても 恭太にしても 蓮を強く否定する事はなく、むしろ自分達が追い詰めてしまったと後悔の念が強く感じられた。 それは、根底にある、共に過ごしてきた友人としての絆からの思いなのだろう。 夢を閉ざされかねない事例なのにも関わらず、彼らの優しさには感服すら覚える。 大和は改めて、この現状に何か一隻投じられないかと、強く思った。 「今すぐには、いい考えが浮かばなくて申し訳ないけど、何か出来る事はないか、俺も考えてみるから。 あんまり…気に病むなよ?」 「…はい。 ありがとうございます。」 大和は恭太に優しく語りかけ、電話を切った。
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