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時の止まる感覚 体の動かし方も、瞬きの仕方さえ忘れてしまった様に、その場に硬直しながら、 それでも 鼓動だけが大きく鳴り響いていた。 大和のそんな様子に、フフっと少し笑い、瑠羽は再び川の方へ視線を向けた。 「なんでかな…?」 小さく呟き、こちらに向ける笑みに、心が全て持っていかれる様な感覚を覚えながら、 「俺の事、好きなんじゃない?」 動揺を押さえつけ、いたずらっぽい笑みを浮かべてそう答えた。 一瞬、唖然と目を見開き、途端に、瑠羽は笑いだした。 あまりの爆笑に、大和もつられて笑ってしまう。 「おい、笑いすぎだろ」 笑いすぎて呼吸を苦しそうにしながら、瑠羽は、大きく息を吐き、整えると、 「…そうなのかもしれないね。」 そう言って、大和の目を見つめた。 「俺は好きだよ。 瑠羽の事。」 大和は、真面目な顔つきで言った。 瑠羽は、口元を笑ませ、1度目を伏せると、大和に向かって手を伸ばした。 「友達からなら、いいよ。」 大和は吹き出す様に少しだけ笑うと、 「何だよ、その上から目線。」 優しく、差し出された手を握り返した。 初めて会った時の印象の悪さから、まさかこんなにも彼女を想う日が来るなんて、思いもしなかった。 無愛想で 口が悪くて 生意気で それは、彼女が自身を守る為に築いた鎧だと知り、それに守られた本当の姿は、 素直で 優しくて 弱くて 脆い ただの女の子だった。 この先、彼女の中で俺の存在がもっと大きくなり、共に道を歩む事になるのか それとも、手を取り合う事もなく、互いに違う道を歩む事になるのか 未来なんて分からない。 でも、確かに言えるのは いつだって笑っていて欲しい いつまでも幸せでいて欲しい と、言う事で。 愛というのは、誰の心にもあるはずなのに、言葉で説明するのは難しく、ハッキリとした定義なんてない。 ただ、ひたすら想い続けている事も 手に入れたいと必死にもがく事も 支えてあげたいと思う事も 時には冷たく突き放す事も 無数にある"愛の形" それならば、俺は 君を守りたい 君の笑顔も 優しさも いつまでも光が降り注ぎ続ける様に それが、俺の 『アイノカタチ』 end
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