1人が本棚に入れています
本棚に追加
ばらばらばら。
何冊かページが取れた。大きくてカラフルで大きな文字で書かれたページが。
一番手前のページを拾い上げると、
「あなたが おとしたのは、きんのおのですか?」
現れたのは、抜け落ちたページ絵と同じ泉の精。
「金の斧でも、銀の斧でも、使い込んだ鉄の斧でもない」
「しょうじきな あなたには……」
「斧はいいから、ページに戻ってくれ」
泉の精は金、銀、使い込んだ斧を持ったままページに戻っていく。
まさか、図書館に纏わる都市伝説に遭遇するとは。目を白黒させたまま、少し離れた所に落ちたページを拾い上げる。
先程の泉の精に似通った姿と、それに向かい合う青年の後ろ姿が描かれたページ。でもそこに何か足りない。
目を凝らし探す。
あった。本棚の隙間に滑り込んだ細長いそれ。
慎重に取り出しページの上に置く。すると、泉の精の手にそれが収まり、本来のページ絵に変化した。
あと一ページ。次はどの絵本の世界だろう。
拾い上げたそのページには、あなた自身の顔が。
ああ、泉に映った自分を見、若返っていることに気づくほうがよかったかもしれない。
赤らめた自分の顔から、目を逸らすことが出来ない。
最初のコメントを投稿しよう!