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 ……眩しい。  目を開けた途端、最初に飛び込んできたのは白い、天井?  そして耳に流れ込む音。短く叫ぶような声のあと、切れ間なくバタバタと駆け込んでくるたくさんの足音。 「名前は? 年は?」 「何があったかわかる?」  知らない人たちに囲まれ見下ろされるように、いろんなことをいっぱい訊かれた。ひとつも答えられなかったけど。  わからない。何もわからない。  いったい、僕は誰? 何故ここにいるの?  横断歩道を渡ろうとしたところに、バイクが左折して突っ込んで来たのだという。  お互いが咄嗟に避けようとして、バイクはスリップして転倒し、僕もよろけて道に倒れ込んで……?  バイクもスピードを落としていたのでライダーの男の人も大した怪我はなく、声を掛けても反応のない僕に驚いた彼が、救急車を呼んでくれたそうだ。  跳ねられたわけでもなく、倒れて頭を打ったわけでもないのに。  何故か意識を無くしていた僕は、目を覚ました今すべてを忘れてしまったらしい。
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