『それから』

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 もとの蒼生が戻って来たらしいあのときは、心の中に別の何かがと表していたが、自分ではない〝自分〟との関係に少し混乱しているのは見て取れた。  少なくとも槇が外から見ている限りでは、蒼生の中で二つの人格が争っている、ましてや人格が切り替わるなどという素振りもなかった。  こうして改めていろいろ考えることで、多少は整理できた気もする。  『同じ身体に二人が同居している』わけではないのだ、きっと。  この蒼生の中で、元の葵生とあの〝あおい〟がひとつになって行くのではないか。  そうして、新しい『行森 蒼生』になる?  だからこそ、この蒼生ならありえないような、けれどあの〝あおい〟ならすんなり納得できるような、ああいうことが起きたのだろう。  今、槇が見せられているのは、その過程なのではないか。  一点だけ見ても、あまりにも違いすぎる『二人』が『一人』になるのはなかなか摩擦が大きそうだ。  いくら元は同じ蒼生だったとしても。  しかし、どれだけ違って見えても、元が同じならどこかに『落としどころ』はある筈だ。  ──俺もこれから、たとえ何を見せられたって、いちいち過剰に反応しないように気をつけないとな。
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