あなたの可愛いは好きに似ている

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 思いのたけをひとつひとつ言の葉にのせて、一枚一枚綴ったその葉書。元気かな、何してるかな、笑ってるかな。そうして今までたくさんの文字で、ただ言葉を贈ってきた。それを、人は重たいというのだろうか。 「あぁ、めんどくさいね」 「うわぁ、身もふたもない」  こうしてばっさり切り捨てるのは、この人の特徴。常に効率よく端的なこの人と私の感性は、どこまでいっても交わることがない。それが、妙に心地良く興味深くて、なんだかんだ楽しくなってしまう。 「年賀状なんて、今時いらないでしょ。作る時間を使うこと自体が無駄だよね。仕事の関連先以外で出したことないよ」  物腰は柔らかく、時には冷たくも感じるその一つ一つは、完璧人間と私が最初に思い込んでいた彼の特徴でもあった。知識量は海のようで、知りたいことがあるとき、他のだれかに聞くよりも彼に聞くことにしているくらい。 「その時間を使うからこそ、温かいものができると思うんですけどねー」 「もっとほかに時間を使うところは山ほどあるはずなんだけどね」 「う…」  こうしてやんわり釘を刺すのは、彼が私の働く会社の社長という存在だからである。しかし、私が彼と出会ったのはバーだった。よく行くバーのマスターと少し話しながらグレンモ―レンジのソーダ割りを飲んでいたときに彼はやってきた。  「タリスカー、ソーダでもらおうかな」  来店したときに顔すら見ていなかったその人がその言葉を発した時につい、隣に目をやったのだった。個人的にはソーダで割る印象のないそのウイスキー(、、、、、、、)の飲み方に、つい反応したからだった。  オーダーを出し終えたマスターが、また私の斜め前まで戻ってきた。 「タリスカーってソーダ合うんですか?」  失礼のないように、こそっとマスターにそう尋ねてみた。マスターは雰囲気を察したように微笑しながら、通常の声で言葉を返してきた。 「ロックでも美味しいけどね、意外と合うんですよ」  言いながら、二席向こうに座った男性に目配せをしていた。 「あぁ、良かったら一杯飲んでみます?苦手でなければ」
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