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この世に存在出来たのも親のおかげであり、俺の今があるのもその両親のおかげ。
奇跡が重なり、生かされた感謝は大きい。
加えて思考する自由を与えられ、学校に行かせてもらえ、知識を蓄える事もできた。
つまり、考え方次第でこの世界はどうにでもなると言う事なのだ。
洗面台の横にある洗濯機を回し、そこから離れると父のいる客間に入り、側に設置されている台所へと向かう。
そして、早速鍋の中のシチューをグツグツと煮込み直すと、皿によそい、食卓のテーブルに並べた。
コレで準備は完了だ。
「母さんを呼んで来るね」
反応をしない父に一応の断りを入れて、母のいる2階の寝室へと向かう。
廊下の隅にある扉につけられた鍵を外して扉を開くと、中は窓は塞がれ、小さな明かりも許さない暗黒の空間に一筋の光が差し込む。
「母さん、ご飯だよ」
そう声をかけると、暗闇の奥から這いつくばり、こちらに近づいてくる音が聞こえた。
良かった、間に合った。
「ほら、母さん。自分の足で立たないと」
そんな暗闇から姿を現した母の姿は、ほぼ骨と皮だけで構成されており、シワがない場所など眼球だけだと思う程、老ぼれて見える。
そんな母は俺の体にしがみつき、必死に何かを問いかけるが、乾いた口では何をいっているのか殆ど聞き取れない。
だが、俺は母の声などなくても、母のいいたい事が全て理解できた。
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