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「洗濯機はちゃんと回してるよ。掃除もしてるよ。学校でも上手くやってるよ。成績は落ちてないよ。薬だって飲んでるし、きっちりクリームも塗ってるよ。父さんは相変わらずテレビを見てるよ」
神経質な母はいつもコレらを気にかけている。
だからこそ直ぐに必要な報告事項を告げたのだが、母の顔は依然納得した様子を見せてくれない。
本当に、この人はどれだけ俺を苦しめたら気がすむのだろうか。
まあ、いい。
それも、あと少しで終わる。
「今日は母さんの為にご飯を作ったんだ。母さんの大好きなシチューだからきっと気に入ってくれる筈だよ」
俺はそういって母を支えながら階段を降りた。
食卓につくと、母を椅子に座らせて水を手渡す。
母はそんな俺が珍しいのか、驚いた表情で俺とシチューを何度も見直していた。
「ほら、最近は全く食事をしていないからね。
それに俺、本当に母さんには感謝しているんだ。
だから、頑張って作ったんだよ?」
こんな形でも、俺の母はこの人しかいない。
ならば、しっかりと親孝行をしてあげないとダメだろう。
「ごめんね、こんな形でしか感謝を示されなくて」
俺がそう言うと、母は水を一口飲んだ後にシチューをゆっくりと口に入れた。
それと同時に、母の目からは微かに涙が流れ落ちる。
余程シチューが美味しかったのだろうか。
だがそれも当たり前だ、コレは母の為にだけ作られたシチューなのだから。
「泣いたら体がますます乾いちゃうよ。ほら、ゆっくり食べて、おかわりもあるからね」
そう言うと、母は微かな笑みを浮かべた。
良かった、母さんの機嫌が治った。
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