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05.ブルーが無愛想な件―ナイト
「なあゴールド、紺野さんっていつもああなの?」
俺は前日、いつものようにゴールドの席で喋っていた時、ゴールドに用があったらしい紺野さんが俺に気づいてか、急に踵を返すのを思い出しながら訊いた。
「あんなとは?」
「いやクールって言うか、素っ気ないって言うか。」
「あーあいつね、無愛想なとこあるからなー。おーい、ブルー、ナイトがお前のこと無愛想だって言ってるぞ。」
止める間もなく、ゴールドは教室の向こう側にいる紺野さんに怒鳴った。こいつは、もう本当に、地声も大きいうえにビー部で鍛えた怒鳴り声がまた凄い。そしてクラス中が紺野さんを見、俺を見、笑った。最悪だ。紺野さんがどんな表情をしているのか、とても見ていられない。
ゴールドはゲラゲラ笑いながら、
「ガン無視かよー、さすがブルー、我が道を行ってんねー。」
とまた大声で言う。
「もう、お前いいから。それに俺、無愛想だなんて一言も言ってないだろ?」
「いやあ、俺楽しんでんのよ。ナイト、今さらだけどさあ、お前キャーキャー言われ過ぎだろ?俺なんか、お前と一緒に歩いてて女子の歓声が聞こえてきて、俺モテてるって何度思ったことか。でもみんなお前見てんだよなー。だからさ、たまにはブルーみてえに無反応な女子もいるとさ、嬉しくなんだよ。イッヒッヒ。」
「イッヒッヒって、お前。」
無反応?でも違う気がする。見られている気はする。見られるのは慣れてるから、普段からもう何て言うか当たり前に受け取っているんだけど。でも何となくそれとは違うような気がして目を上げると、紺野さんと目が合うことが多い、気がする。でもゴールドとかと一緒な時は滅多に話さない。こちらから話しかけても、返事はほんの一言とか。何なんだろう?性格なんだろうか…束の間考えこんでいると、
「なあお前、今日珍しく部活無いだろ?俺らも鬼の神ちゃん出張でさー、練習抜けられんの。学校終わったら遊びに行かねえ?」
とゴールドが、ひそめられない声を最大限に(?)ひそめて近づいてくる。
「ち、近いよ、顔が近い。第一何で小声?」
「だってさ、お前がフリーでいるってわかったら、女子たちが離れないだろ、だからさー。」
「いや、そんなことはないと思うけど。でも、そうだな、久しぶりだし。いーよ、どこ行く?」
「まずはゴールデンゲート。俺さ、あそこのパフェ、もうともかく食いたい。」
そうだった。こいつは体がデカいくせに、と言うか、まあデカくても別に関係ないか。ともかく極度の甘党だったんだ。ゴールデンゲートの名物ボルケーノを週一で食べないと、身も心も(俺は頭もと付け加えたい)動かない、と公言している。いつもは部活帰りにビー部仲間と行っているらしいが、今日は俺とか。
「じゃ、放課後な。下駄箱で待ってるわ。」
「いやーん、ナイト君にそんなこと言われたら、ゴールドドキドキしっちゃって、もう。」
身もだえするなんとも不気味な奴を放っておいて、教室を出る。
まただ。振り返ると、やっぱり紺野さんと目が合う。でもすぐに逸らされる。何だろう?さっきのこと、やっぱり気に障ったんだろうか。
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