05.同、置き去りーナイト

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05.同、置き去りーナイト

ええと、何がどうなったんだ? 俺は確か簡単な質問をして、紺野さんが普通に答えてくれるものと思ったんだけど。何て聞いたんだっけ?そうそう、目が合うのに素っ気ない理由だ。なのに、何で俺はまた道に置き去りにされてるんだろう。この気持ちの良い夕暮れ、散歩にぴったりな代官山への道を二人でゆっくり歩く。最高な土曜日の終わり方だと思ってた。HAKUSUIで、紺野さんがどんなCDを選ぶのか、俺の好きな曲にどんな反応をするのか、本はどんなのを読むのか。5時過ぎに着けば、少なくとも1時間はたっぷり過ごせると思って、朝から話しかけるタイミングを探していた。 でも俺には気のいい3人組がくっついていたし、移動の時にはゴールドが喋りまくってたし。そしてとうとうみんなが“ゴールドと紺野さんの仲の良さ”について話題にした。俺は何も言えなかった、ただの一言も。そして映画館でも離れた。今日に限って全然目も合わないし。でもそう言えば最近は全然目が合ってなかったな。俺が目を上げても、紺野さんは全然違うところを見ていることばっかりだった。それでやっと彼女が一人でトイレに行ってくれたから、俺もトイレに行くふりをして外で待っていた。そもそも女子って何であんなにトイレに行くんだろう?紺野さんに至っちゃ、映画の前後で2回もだし。 いや、まあ、でもやっと何とか約束出来たと思ったら、今度はゲートで夢中で話し込んでて、こっちをチラッとも見ないし。だから、結構あからさまだけどいいか、と腹を括って連れ出したのに、黙るし。ちょっと話したと思ったら、突然帰るし。怒ってたよな、でも何で?さっぱりわからない。俺のことをみんなが見てるとか何とか言ってたけど、そんなの何か関係あるか?俺はみんなのことを聞いたんじゃなくて、紺野さんが確かに俺を見ててくれてるのか知りたかっただけなのに。俺の独りよがりじゃなくて、ちゃんと目が合ってるかどうかを確かめたくて。それとどうして俺とだけ話が弾まないのか、その理由も。ゴールドとだけあんなに話すのかと思ってたけど、柿本や甲斐とも楽しそうに喋っていた。あれは結構ショックだった。ショックだった自分が面白くもあったけど。今まで大抵女子は俺と喋りたがった。俺の目を覗き込んで、楽しそうに笑う、キラキラぴかぴかしているのが女子だと思っていた。なのに何なんだ、このネガティヴな展開は。 全く、紺野さんのことは手に余る。
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