01.前、3月

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01.前、3月

「いやあ、今年の新入生は面白そうですね。」 「あら、先生も思われました?」 「ええ、何でも“伝説”が入ってくるそうですから。」 「水木咲夜(みずきさくや)ですよね。キャッチフレーズがあるそうですよ。」 「キャッチフレーズ?」 「ええ、“全東京女子が泣いた”らしいです。」 「何ですか、それは。」 「ねえ、私もそう思ったので覚えているんですよ。うちの女子生徒たちが早くも噂していましてね。」 「早いですねえ、情報が。」 「私も早く見てみたいですわ、なーんて。」 「先生まで。女子ですねえ。」 「うふふ。それはそうとして、もう一人伝説化しそうな生徒が入ってきますよね。」 「ああ、入試で歴代最高点を出した、紺野くんですか。紺野麻(こんのあさ)。」 「ええ、どの教科もほぼ満点でしたものね。ただ間違ったのが、昆虫って漢字。」 「あれには笑いましたよね。なんとなく微笑ましくて。昆の字が自分の紺になってましたからねえ。」 「ええ。ほら、あとそれにもう一人いましたよね、あやうく失格になるところだった。」 「ああ、あの自分の名字の後ろにミドルネームをつけた生徒ですよね。何だったけかな?」 「ゴールドですよ、ゴールド。」 「ああ、そうだ金子、ゴールド、(あゆむ)。まあ、ギリギリでしたが無事合格しましたね。」 「何だか名物ぞろいな学年になりそうですねえ。」 青山南高校の春休みの職員室では、物理の吉田先生と英語のミス鮫島が、のんびりとお茶を飲みながら話していた。
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