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01.4月
青南では1・2年とクラス替えはない。
ないので、担任は持ち上がりの物理の田部島先生のままだ。で、嬉しいことに3人組とも一緒。
「あー、腹減ったー。」
1時限目が始まる前から大声で騒いでいるゴールドとは、嬉しくない一緒。
「ゴールド、あんた朝食べてきてないの?」
それでも、ゴールドの席の近くの女子たちが世話を焼く。
「ほら、私今日余分に菓子パン持ってきたから、食べなよ。」
「おお、サンキュー。鬼の神ちゃん、今日かみさんと喧嘩でもしたのか、すんげー機嫌悪くて、いきなりグラウンド20周だもんな。」
ものの2口で菓子パンを終わらせたゴールドは、さらにリンゴまでもらいご満悦だ。どうみても、動物園のゴリラとしか思えない。
「ブルー、何見てんの?」
一番席の近いまゆみが訊いてくる。
「いやあ、ゴリラ、おっとゴールドが世話焼かれてるなあって思ってさ。」
「ああ、だね。そういえばゴールドって結構人気あるらしいよ。」
私はちょうど水筒から麦茶を飲んでいたのだけれど、むせた、盛大に。
「マジ?」
「マジ。」
「どこが?何が?誰に?」
「明るいから?背が高いから?ビー部のキャプテンだから?」
「そんなんで…単なるバカだってこと、見てればわかるだろうに。」
「いや、だからブルー、あんた自分のポジション自覚しときなよ。」
「は?」
「あんたなんてゆーか、ゴールドの親友みたいになってるじゃん。」
またむせた。今度は確実に気管に入り、なかなか咳が止まらない。涙も出てきた。何度か咳続けてようやくかすれた声が出るようになった。まだ喉が痛いけれど、これはでもどうしても言わなくちゃ。
「し、親友って。冗談キツイよ。」
「いや、私らはわかってるよ、いつも見てるからね。でも、あんまよく知らない子たちは、あんたとゴールドの口喧嘩見て、仲が良いなあ、付き合ってるのかな、まだだとしたら友だち以上かなあ、とか羨ましく思うわけよ。」
「はああ?聞けば聞くほどわかんない。」
「私に怒んないでよ。でもまあ、ゴールドがあんたに構うのは事実だし。なんでだかサッパリわかんないけど。」
「わかってたまるか。ったくもう、なんて高2の始まりなんだ。」
「ちょっと、ブルー。何そんなに怒ってんのよ。もしかして誤解されたら困る人でもいるの?」
一瞬あの瞳が頭をよぎる。でもすぐ自嘲する。誤解って、するわけないか。別に気にも留めてないだろうし。っていうか私の事、知らない?多分覚えてもないだろうし。
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