赤銅色の未来

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赤銅色の未来

「ありがとう……」 「僕こそ、うれしいよ」 「大好き、一緒にいたい」 「初めて会った時から、君を愛……してたんだ」  もう一度、強く抱きしめ合った。お互いから香る匂いを吸い込み、その存在を確かめ合っていた。 「……怪我、大丈夫?」 「大した事ないよ、君こそ体は平気なのか?」 「私の波動は……どうやらここが合っているみたい。赤の波動」    ――ウォウ、ウォウ――  ハルが尻尾をグルグル回して、完全同調のサインを送っていた。  二人は視線を夕陽のほうに移すと、すでに青と黒の世界は遠くに離れていて、辺り一面、赤のグラデーションの情景となっていた。  二人が取り残された世界……赤銅色の次元境界   「二人だけになっちゃったね」 「秋菜と一緒なら、どこでもいい。ここで二人でうまくやっていこう」  秋菜は微笑んだ。未来への不安はどこにもなかった、ただ春樹の気さくな笑顔を見れて、安堵の気持ちしかなかった。 「さてと……まずはコンビニでも行って、食料でも探すか?」 「そうね、たぶん誰もいないと思うけど。あとその頭、とりあえず消毒して包帯でも巻こうか?」 「住むところも考えないとな」 「どこも空き家だと思うから……気に入ったところに住もうよ!」  いつの間にか、秋菜は自然に話せるようになっていた。  二人は手をつないで、橋の上を歩き出した。  永遠に沈まない夕陽が河川を照らし、絵画のような黄昏時(たそがれどき)景趣(けいしゅ)を水面に描いていた。
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