赤い果実

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赤い果実

 五年後―― 「春樹は無事に秋奈ちゃんに会えたかな……」 「秋菜が行方不明になってもう五年。見つかればいいけど」  二人の両親は待ちわびていた。再び二つの世界が交わる時を。  消息を絶った春樹と秋菜の手がかりが掴めるかもしれない。  青と黒の世界は交わりを始め、その境界線から赤銅色が広がっていった。  二つの世界の人々が再び相まみえ交流を始めた頃、二人の両親も彼らの姿を探していた。  橋のたもとに差し掛かったところで、橋の上に立つ二人の男女を見つけた。  それは見紛(みまが)うことなく、成長して大人となった春樹と秋菜であった。 「春樹!」 「秋菜!」  二人の両親が駆け寄ると、春樹が笑顔で手を振ってきた。 「よかった、生きていたのね。もう会えないんじゃないかと心配してたのよ」 「父さん、母さん、久しぶり。なんとかやってこれたよ。ハルも一緒だ」  ――ウォウ!――  ハルが元気よく、尻尾を振った。 「それと……紹介したい家族がいる」  よく見ると、秋菜が大切そうに抱いているものがあった。秋菜の手から両親の元に、それはそっと差し出された。 「僕達の子供、夏芽(なつめ)だよ。ほら夏芽、おじいちゃん、おばあちゃんにご挨拶」  秋菜の母親は赤子を受け取ると、ぎゅっと抱きしめ、祈るようにその赤子の額に唇を当てた。 「次元結合もうまくいきそうだ、みんなが一緒に暮らせるひとつの世界が戻ってくるよ……」  春樹の父親は気が緩んだのか、目から一雫(ひとしずく)の涙を(こぼ)していたが、ハル以外、誰も気づいていないようだった。  辺り一面が赤く染まる頃になると、中央に夕陽が見えてきた。  赤い果実の実りを祝福するように、優しい黄金色(こがねいろ)を灯していた。 完
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