公園の二人

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公園の二人

 人通りが少なくなった街はずれの公園で、二人はブランコに腰かけた。ブランコを揺らしながら、しばらく沈黙が続いた。  幼い頃の面影を残しつつも、成熟した秋菜の肢体のしなやかな線に、春樹は目のやり場に困っていた。 「……久しぶりだね」 「うん……春樹も元気だった?」  …… …… 「あの!」 「あの!」  話すタイミングが重なってしまったため、春樹はどうぞと手で差し伸べて、先を譲った。 「あの、何の挨拶もせずに別れてしまって……ごめんなさい」 「いや、秋菜はしょうがないよ」 「誰とも話せない私といつも仲良くしてくれて……うれしかった」 「違うよ、そうじゃないんだ。それは僕が……」  “君をっ”と言いかけたところで、春樹は口を(つぐ)んだ。  …… …… 「その犬、どうしたの?」 「私病気でね、次元不適合障害って言って、このワンちゃんがいないと、黒の世界で生きていけないの」 「ふうん、名前は?」 「……ハル」 「その名前って……」  …… …… 「こうしていられるのも、あと一日だね」 「うん」 「僕さ、父親の研究でわかったことなんだけど、特異体質でさ、青の世界、黒の世界、どちらにも適正があるらしいんだ」 「……」 「今度は黒の世界に行くのもありかな……なんて思ってるんだけど」 「……」 「どう思う?」 「……」 「秋菜は……寂しくない?」 「私は……」  言えなかった、それはとても勇気がいる言葉だった。言った途端、すべてが壊れてしまうのが怖かった。 「僕は……秋菜と一緒にいたいなと思った」 「どうして?」 「それは……」  春樹も言えなかった、そんなに簡単に言える言葉ではなかった。ただ気持ちを伝えたいという想いだけが積り積もっていた。  細い糸に手繰(たぐ)り寄せられるように、二人は顔を向け見つめ合った。  お互いを優しく包み込む眼差しは、くすぐったい、胸がほのかに熱くなる感触だった。  でもだからと言って、どうすることもできない……住む世界の違う二人。 「そろそろ家に帰ろうか」 「うん、たぶんお父さんが待ってる」 「いつか、みんなが一緒にいられる日が来るといいな」 「そうね……春樹と会えるのも、また五年後かな? その時は……もう私なんかに会ってくれないよね?」  秋菜は寂しそうな笑顔で、春樹に問いかけた。 「たとえ五年後でも僕は必ず君に逢う。君を待っている」 「……ありがとう」  ――ウォウ!――
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