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別れる世界
翌日、再び青の世界と黒の世界が分かれる時がやって来た。
人々は別れを惜しみ、互いの温もりを忘れないよう、強く抱擁を重ねた。五年という長い歳月が彼らの繋がりをさらに強いものにしていた。
「それじゃ、お父さん、元気でね」
「ああ、母さん、秋菜、元気でな」
「あ、忘れ物」
そう言うと、母親は父親の頬にチュッと軽くキスをした。
またもや顔を赤くした父親は、大きく手を振りながら家を後にした。
二つの世界が分離する際、次元が不安定になるため、それぞれの安全地帯まで退避する必要があった。そのため、父親は家を離れなければならなかった。
「もうすぐ青の世界とお別れね……秋菜、春樹くんに挨拶は行かないの? もう時間ないわよ?」
「うん、でも私こんな体だし、彼と話したからって、どうにもならないし」
「もう会えなくなるのよ?」
「……私は」
――春樹と一緒にいたい――
――まもなく次元分離が開始されます。住民の皆様はそれぞれの安全区域まで退避をお願いいたします――
街に設置された屋外拡声スピーカーから、緊急放送の音がこだましていた。
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