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スタッフで食堂に集まり、ミーティングをしながら朝食を囲んだ。
「じゃぁ、俺と絢也で登山道を確認して来るから、ほかのみんなはいつものように、開店の準備をしておいてくれ」
昨日の嵐で、登山道が崩れていないか、ロープが切れてないか、安全確認をする為、急いで朝食を済ませ、絢也と二人で登山道を下った。
ごつごつした岩肌が剥き出しになっている道なき道を先に進むと、湧水が滾々と湧き出る緑の多い一帯に辿り着いた。
そこで、朝一番に登頂を目指して登ってきた顔馴染の登山客の団体と出会った。
その中に、いるはずのない人物の顔を見付け、狼狽えた。
なんで、彼が、ここに・・・・?
彼もすぐに俺に気が付いて、駆け寄ってきた。
「翔・・・」
彼とは半年以上連絡を取り合っていない。
声を聞くだけで、体がじんわりと熱を帯びて、頭がおかしくなる。
それなのに、この至近距離。
頭がくらくらしてきて、心拍数が一気に跳ね上がった。
キュンキュンときめく年でもないのに・・・。
年甲斐もみっともないくらい顔が真っ赤に染まるのが分かり、慌てて顔を逸らした。
「お前の事だから、手紙を読まずに捨てたと思って、会いに来た。翔、俺と一緒に、一樹を支えて欲しい。今回の選挙は、おそらく厳しい闘いになる」
山奥に引きこもれば彼に一生会わずに済む。
そう思っていたのに。
「鏡・・・久しぶり・・・」
「あぁ」
彼は昔と変わらぬ笑顔を見せてくれた。
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