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好きだった、あぁ気付いてた-裏-
俺と岡崎先輩は、
近くのファミレスに入るとメニューを広げた。
「先輩の奢りだから遠慮するなよ」
「あざっす、じゃあステーキで」
「おい!ちょっとは遠慮しろよ」
岡崎先輩はそう言いながらも
ステーキを注文してくれた。
「で、なんか合った?応援団長、、、の事なんかじゃ絶対ないよな、まぁ、あれだ、葵ちゃんの事だろ?」
岡崎先輩はステーキを食べながら
俺に問う。
なんか不思議な感じだ、
好きだった凪ちゃんの彼氏と
こうして二人で話しているんだから。
それに今思えば、先輩後輩と言う立場でも、
岡崎先輩と二人になる機会は少なかった。
「岡崎先輩は去年の体育祭の事覚えていますか?、、、パン食い競争の事、、、覚えていますか?」
岡崎先輩はフォークを置くと、
俺を見る。
「もちろん、覚えてる」
「俺が出場してた事も?」
「もちろん知ってる、、、凪にパンを渡した事も」
「じゃあパン食い競争のジンクスも、、、」
「もちろん知ってる」
そりゃそうだろうな、
俺もこのジンクスを知ったのは、
確か1年の時の部活動の最中だった。
「で、葵ちゃんにジンクスを知られ、凪にパンあげた事も知られって、、そんな相談か」
岡崎先輩の鋭さに俺は頷く。
「そんなに悩むって事はそれほど葵ちゃんが好きなんだな伊織は」
「えっ?」
「いや、内心どこかでまだ凪の事、、、って思ってた」
「そんな事ないですよ今は」
岡崎先輩、そんな事考えてたのか。
俺は意外だった。
「でもさー、どんなに悩んでも、もう過去には戻れないんだよ」
「そんなこと、、、」
「卒業して実感した、俺は戻れない高校生活でやり残した事だらけだ、パン食い競争だってそうだ」
「どういう、意味ですか?」
「あー、、、」
岡崎先輩は深いためいきをつくと、
ステーキを再び食べ始める。
「伊織が葵ちゃんが好きならもう時効だよな、、、体育祭の数日前だった、俺は凪に言われたんだ、パン下さいって」
「!?」
「でも俺さ、正直誰かと付き合うとか考えてなくて、伊織には悪いけど凪が俺に好意があると解ってても、俺は凪の事、どうも思ってなかった、、、でもさ当日のパン食い競争で、伊織が大勢の観衆の中で凪にパンを渡した時、気付かされたよ、奪われたくないって」
「、、、その頃からもう俺は岡崎先輩には勝てなかったって事ですね」
「伊織、バスケと一緒でさ、勝負には勝つ奴と負ける奴がいる、それはほんの一瞬でくつがえされる場合がある、、、だから俺さお前には謝らないよ」
そう言うといつも通り
岡崎先輩は笑った。
凪ちゃんが選んだ人。
俺が多分ずっと勝てなくて、
でも尊敬してる憧れの人。
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