第1話 田舎の夏はガキが憎い

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 高い位置から頭を焦がしてくる太陽から逃げるかのように木陰に入り、僕は足を休め一息つく。正面に見える防波堤では、件のガキたちが輪になって何やら奇妙な遊びに興じている。先ほどまで僕もそこにいたのだということが信じられないほど、エネルギッシュな空間だった。  ここから防波堤までは直線距離で百メートルは離れているはずだが、彼らの姿ははっきりと見える。海からの風に涼もうとしても、風に乗って届く奴らの奇声に暑苦しささえ覚えるほどだ。そんな場所を彼らは「秘密基地」と呼び、毎日の遊び場としていた。僕が思うに、奴らは秘密の意味を知らない。  暑さでやられた頭でそんな風景をボーっと眺めていると、ガキどもの保護者のように彼らをそばで見守っていた美少女が、こちらの視線に気づいたのか手を振ってきた。  腰まで伸びた長い黒髪と真っ白なワンピースの裾が潮風に揺れる。その姿は、僕よりたった二歳年上に過ぎないのに非常に大人びて見えて――。絵画の世界から飛び出してきたような出で立ちに、僕の心臓はひときわ跳ねた。  この島に来てからロクなことがないのだが、それでも島に来て良かった点を挙げるとするならば、彼女に出会えたことだろう。
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