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かくして僕は件の防波堤を出発し、夏の暑さに即バテて木陰で一休みする、という今に至るわけだ。我ながらなんとも情けない。
先ほどから手を振り続けてくれている先輩に元気づけられ、さあもう一度炎天下に繰り出そうかと足を踏み出した、その時だった。
「お~い、悠太! 早く行けよ!」
「そーだぞ! 俺らが熱中症で倒れたらお前の責任だかんな!」
先輩が僕に手を振っているのに気づいたのか、ガキどもがなにやら生意気なことを言ってきた。何度も指摘したのに、相変わらず年上の僕のことは呼び捨てだ。
ガキどもをジト目で睨みつけつつ、先輩に救いを求める視線を投げるが、先輩は困ったように笑うだけ。はいはいわーったわーった。行きますよ。行けばいいんでしょ、まったく。
僕は再び、灼けたコンクリートの上をとぼとぼ歩きだす。まだギャーギャー言ってやがるガキどものせいで、背中の奥の方が騒がしい。
道路には、僕以外の人影がない。だいたい、信号機が無いような島なんだから、車なんか通りっこないのだ。だから別にチビッ子に買いに行かせたって事故なんか起こりやしませんよ、先輩。
ジジッと、木陰でセミが飛ぶ音が聞こえた。
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