第2話 田舎の個人商店はコンビニを騙る

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 海岸線に沿って曲がる道を歩いていくと、ようやく村上商店が見えてきた。海岸とは逆サイドにこんもりと茂る藪が作る日影が涼しい。  村上商店の手前にある藪の中には、ボロボロで今にも崩れそうな鳥居がある。かつては、綺麗な朱色をしていたのだろうが、今や鳥居は元の木の色をむき出しにして、青みがかった寂しい灰色をしている。鳥居の先には、これまたボロっちい小さな祠が祀られているが、その姿はほとんど藪の中に埋もれてしまっている。  ふと思い立って、普段は通り過ぎるこの鳥居に近寄ってみた。伸びきった夏草が、むき出しの僕の脛をくすぐる。  この神社は、かつて漁業が栄えていたこの島で、航行の安全を祈願して作られたものらしい。しかし、年々漁業が衰退していくにつれて忘れ去られていってしまったのか、役目を終えたかのように、手入れのされていない草藪にひっそりと消え去ろうとしていた。  だが、この神社が完全に島民の意識から無くなっているのかというと、それはそうではないらしい。
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