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第1話 田舎の夏はガキが憎い
「……くそ、あちぃなぁ……夏のばか……あほんだら……おたんこなす……なすの漬物は噛んだ時の音が嫌い……あほんだらぁ……」
刺すような日差しと抜けるような青空の下、海岸線に沿って走る島で唯一のコンクリート道路を、僕は一人でとぼとぼと歩いていた。
サラウンド音声で広がるセミの鳴き声と波の音にうんざりして、自然とため息が漏れる。そのため息すら、どこかもわんとして鬱陶しい。
額からこめかみを通って頬を伝う汗を拭いながら、僕は思う。そもそも夏というものは非常に罪深いものだ。まず第一に、暑い。なぜこんなにも暑いのか、世界のバグを疑うほどに暑い。あと虫が出る。昨日の夜中に僕のベッドに現れて朝方まで耳元でプンプン騒いでいたアイツを僕はまだ許していない。水道水がぬるいのも個人的にはイライラポイントだ。
こんな風に列挙していけば枚挙に暇がないほどさまざまな罪状により、以前から夏というものは僕の中で極悪非道の存在であった。
それでも夏というものが毎年毎年忘れもせず我々の元にやってくるのは、その重罪がゆえに終身刑に課せられているからであろうが、今年僕のもとにやってきたそいつは、ひと際厄介なものを引き連れていた。
それは太平洋に浮かぶ孤島で、さして仲良くもない島民の少年少女達と、たいして楽しくもない夏休みを過ごさなければならないということだ。
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