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植松は、冷静に答えていく。
「里親にも色々、種類がありますが、基本は児童を決まった期間家に預かり、代わりに育てていく事です。僕が住んでいる都道府県や政令市の児童相談所に相談し、要件を満たせば申請できます。里親になる年齢が25歳以上ですから、おそらくそこはクリアしているでしょう。」
叶恵は、話を聞きながら、感心した表情になった。
「植松くん。顔は地味なのに、あなた大胆な事を思いつくわね。」
植松は笑っている。
「母さん。余計な事は言わない!」
貴志が、叶恵を注意した。
運転する植松の表情は、何かを目指している穏やかな顔つきになっている。
「・・これが、僕の報恩。恩返しです。」
それから、一週間が過ぎようとしていた。
時計は、夕方5時を過ぎようとしている。
タコ焼きハウス・エリーゼの店先に、叶恵が立って自分の肩を揉んだり、回してみたりしている。
「あ〜、今日も働いた〜。」
その時、貴志が外に出てきた。
「じゃあ俺今日、バイトあるから。」
「あ、そうなんだね。気をつけてね。」
叶恵が返事した後、貴志がまた声をかけてくる。
「ねえ。植松さん。どうなったかなあ。」
叶恵は、チラリと貴志の方を見た後、陽の落ちかけた空を見上げて言った。
「あの時の、植松くんの表情を見ただろ。彼なら、きっとうまくいってると思うよ。」
「そうだよね。」
貴志も、ニッコリと笑い返す。
「じゃあ俺、遅れるからもう行ってくるよ。」
「は〜い。本当に、気をつけるんだよ。」
叶恵は、自分の腰を揉みながら、応えた。
「あ、母さん。」
と、貴志が再び戻ってきて、叶恵に話しかけてくる。
叶恵は、貴志の方を向いて聞いた。
「ん? 何? どうしたの?」
貴志は微笑みながら、叶恵に伝える。
「母さん。いつも、ありがとう。」
そう言ったかと思うと、貴志はもう走り出していた。
残った叶恵もまた、微笑みながら貴志の後ろ姿を見つめるのであった。
—————ケース4に続く ————————
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