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ケース3️⃣ 前世報恩
この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
「ありがとうね〜! また、来てね!」
元気な声が、青空へと響き渡る。
『タコ焼きハウス エリーゼ』の看板があった。
ここは、いつものたこ焼きハウスの店。
叶恵が笑顔で手を振っている先には、たこ焼きの入った袋を持って立ち去る女子高生二人の姿があった。
その後叶恵は、自ら肩を揉んだり回してみたりする。
「最近、いよいよ肩凝りがヒドイねえ。」
顔をしかめながら、店内の椅子へと腰かけた。
その時、ヒョッコリ店の中を覗き込む顔がある。60歳代ぐらいの中年のおばさんだった。叶恵は思わず驚いて、ハッとするが、すぐに気を取り直して、
「あ、いらっしゃいませ〜。たこ焼きですか?」
と対応する。
「何を言ってる! たこ焼きなんか、いるもんか!」
元々不機嫌そうにしていた顔が、更に火がついたように赤く怒鳴りあげてきた。
叶恵は、何をそんなに怒鳴られているのか分からず、立ち上がって店頭から顔を出す。
改めてその不機嫌そうな60歳代のおばさんを見直してみたが、叶恵の記憶の限りでは初めて見る顔で、今までお客として来店した事もないはずである。
ただ気になったのは、そのおばさんの格好だ。
ほとんど白髪だらけの髪は癖毛でパーマみたいになっており、丸い顔はシミを隠すためか妙な白さが際立つほどファンデーションを塗っている。ほとんど見えない首には、黒い玉が連なったネックレスが見えた。服は、スパンコールが入った黒いローブのような長い衣装を纏い、木の根っこのような指には、思わず見入ってしまいそうなグリーン色の大きな宝石のリングをはめている。
叶恵は一通り観察した後、改めて恐る恐る尋ねてみた。
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