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叶恵が、修治の方を見直して言う。
「准教授⁈ この人が? そんな役がついてるなんて、初めて聞いた。それが、どれだけ偉いのか知らないけど。」
植松が熱心な顔で訴えた。
「偉いですよ! 僕なんか、ただの研究員ですから。秋原さんは、僕たち研究員に色々教えてくれますし、いつも研究所に泊まり込んで納得いくまで研究してるんです。」
叶恵が諭すように、植松へ話す。
「それはね。素晴らしい事じゃなく、家族にとっては迷惑な事なんだよ。研究所に泊まり込んで、何日も帰って来ないなんて。植松くんも、いずれ結婚とかするなら、覚えておきなさい。」
「あ、はい。」
植松が、申し訳ないといった感じで返事した。
叶恵は、皿に乗ったイカスルメを取りながら、植松に聞く。
「植松くん。大学とか出てるんでしょ? 何で、こんな研究所に勤めているの?」
「はい。一応、それなりの大学は卒業しました。特になりたいものとかなかったのですが。研究っていうのは人類にとって素晴らしい成果をもたらすし、なかなか楽しいですよ。」
植松が、目を輝かせて言った。
叶恵は、府に落ちないといった感じで、尋ねる。
「ふ〜ん。私は学生時代から、理科の授業とか嫌いだったし、研究なんて興味ないしね。研究所で、何を研究してるの?」
植松は、水を得た魚のように活きいきと答えた。
「そうですか。まだ未発表な事など、外部へもらしてはいけない内容もありますが。研究所といっても全国にはたくさんあります。
大阪にある、微生物病研究所のように、規模の大きな整った施設もありますが、僕たちの研究所は、小さな規模の研究所です。」
叶恵は、口の中のイカスルメを噛みながら、じっと話を聞いている。
植松が話し続けた。
「主な研究としては、微生物学、感染症学、免疫学を中心として、癌研究、遺伝子工学、ゲノム科学など、様々な分野に貢献しています。」
叶恵が、首を傾げながら言う。
「何か難しい、よく分からないような研究してるんだね。」
植松は、堂々した表情で答えた。
「でも、人類にとって、とても重要で大切な事を研究しているんです。」
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