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そこまでの話の中で、叶恵はまるで頭の中のコンピューターが正常に作動出来ず、故障しそうな状態になった。
「うう・・。何か、難しい言葉ばかりで・・。」
それを見て、修治が苦笑いして言う。
「ほら、言っただろう、植松。理解出来るもんか。」
植松は叶恵に対して、申し訳ない顔になり、謝った。
「あ、すいません。難しい専門の話しで。」
「・・いや、いいのよ。聞いたのは私の方だし。」
叶恵は、抑揚のない声で返す。それまでの話の内容を挽回するつもりで、植松が付け加えた。
「でもその成果としては、病原微生物の研究を進める中で、癌遺伝子や細胞融合現象の発見、自然免疫機構の解明など、生命科学の発展に極めて大きな足跡を残してきたのも事実なんです。」
叶恵はもう、お腹いっぱい、頭の中いっぱい、といった感じだった。
「・・まあ、とにかく、何か凄い事をやってるのね。」
そう言った後、叶恵は更にあくびをしはじめる。
植松はそれを見て、戸惑いながらまた頭を掻いた。
「あ、難しい話で、本当にすいません。」
「いや、気にしなくていいわよ。ただ同じ話を私、出来そうにないから、貴志がいる時に話してもらえば良かったかなあ。」
叶恵が、風呂場の方向を見ながら言う。
「あ、大丈夫ですよ。僕なら、いつでも説明しますから。」
植松は、あくまでも戸惑いの混じった顔で、上手に受け答えた。
その後、植松は表情を切り替えて、叶恵に話しかける。
「ところで・・・。ここは確か、たこ焼き屋さん・・ですよね?」
「そうよ。私が経営する、たこ焼き屋。『タコ焼きハウス・エリーゼ』をよろしく!」
叶恵が陽気な表情に戻り、宣伝した。
「知ってました! ここのたこ焼き屋。エリーゼって店の名前がついてるのは知りませんでしたが。」
植松も調子良く、叶恵に告げる。
「うちの、たこ焼き屋。知ってたんだね。」
叶恵は嬉しそうに言った。
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