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「もちろんですよ。家族や周りの友人から話を聞いてまして。一度、食べてみたいなあ、って思っていたんですよ。」
「じゃあ、ぜひ今度、食べに来て!」
叶恵は興奮しながら話す。
その時、修治が静止するように、植松に伝えた。
「は? 植松。本気で言ってるのか。こんな店のたこ焼きなんて、やめとけ。次に買いに来た時には、店潰れてるかもしれんぞ。」
植松が返答に迷っている間に、叶恵が先に言い伏せる。
「そんなわけないでしょ〜。残念ながら、うちのタコ焼きは、なかなか人気あるんだよ。」
「あ、その通りですよね。人気ありますもんね。たこ焼き屋、営業時間とか定休日は、いつですか?」
植松が笑顔になって、叶恵に尋ねた。
「『タコ焼きハウス・エリーゼ』は、営業時間が朝9時〜夕方18時までやってるよ。時々、その時の気分で多少時間は前後するけどね。定休日はなし。基本、年中無休。まあ、どうしてもの臨時休業の時は、貼り紙しておくよ。」
叶恵が得意げな表情で、説明してくれる。
「わかりました。ありがとうございます。時間見つけて、来てみますね。」
植松も嬉しそうに返答した。
「あ〜あ。植松。お前、腹壊すぞ。あと、お土産として買って研究所に持ってきたとしても、間違っても俺にはくれるなよ。」
それでも修治は、嫌味を言い続ける。
ちょうどその時、風呂場から貴志が上がってきた。ルームウェアを着て、まだ湿っている髪の上にはタオルを被っている。
「じゃあ俺、もう二階に上がるよ。」
貴志は、そう言い残して居間を後にした。
修治がまた、ビールを植松のコップに注いでいく。
「ほら、飲めよ。」
「あ、ありがとうございます。」
植松は、修治にお礼を言った後、ビールを一口飲んだ。
叶恵が、しんみりと切なる思いを呟く。
「所詮たこ焼き屋だ、なんて思ってる人もいるかもしれないけど、それでも長年私なりにたこ焼きを作り続け、美味しいって買いに来てくれる人の為にやってきたんだよ。」
叶恵のその真剣な眼差しを、植松は見つめた。
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