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「『座右の銘』とは、生活や仕事、人生において、しっかりと心にとめておく言葉、という意味なんです。だから、今言われたように、私の座右の銘は、犬も歩けば棒に当たる、です!といえば、それで成り立つ事なのです。」
「へぇ〜。」
叶恵は感心しながら聞いていたが、勉学が出来そうな見た目の植松が、いざ実際にその知識を披露すると、それ以上声が出せなかった。
植松は、更に話し続ける。
「『座右の銘』の『右』という漢字は、そのまま右側という意味で使われる事がほとんどですが、『身の回り、すぐそば』という意味もあります。『座右』だと座っている所のそば、つまり、『立って行かなくても手が届くくらい近く』といった感じです。」
ポカンと口が開いたまま言葉もなく聞いている叶恵は、僅か26歳の青年の前で、ただの生徒になってしまっていた。
そして植松の話が続く。
「『銘』は、『しるす』とも読み、金属や石碑に刻み込んだ言葉、立派な道具に掘っている製作者の名前や石碑に刻まれた大事な言葉、などです。したがって、『座右の銘』は、すぐそばに置いている重要な言葉、その人が大事にしている考え、という事になります。」
そう言い終えたところで、叶恵が激しく拍手を叩いた。
「凄〜い! 私でも分かりやすい説明ね。」
植松は構わず、付け加える。
「何かの功績をあげた有名な人、成功した人は、多くの場合、なにかしら座右の銘がありますし、これを心に留めて持っておくと、失敗を防いだり、自分自身の励みになるものです。」
叶恵はまた、拍手喝采で騒ぎ立てた。
「本当に、凄〜い! 学校の先生みたい! 植松くん、研究よりも学校の先生になれば良かったのに。」
植松は、ビールを口にしながら答える。
「大学に行きはじめた頃は、学校の先生になりたいと思った時期もありました。」
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