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「あのう。では何か御用でしょうか?」
その60歳代のおばさんは、両手をカウンターへ掴むようにして乗り出し、更に興奮して怒鳴る。
「まだ、分からないのかい! あんたの所に迷惑してるんだよ!」
「迷惑?」
叶恵は、それでも事情が分からず、聞き返した。
おばさんは、周囲に聞こえる程の大きな声で話す。
「たまたま、女子高生から聞いたんだよ! アンタこの店で、たこ焼き屋とか言いながら、こっそり占いをやってるんだろ⁈」
叶恵は、そう言われてすぐに説明した。
「本職としては、たこ焼き屋でして。占いの方は趣味というか、あの〜代金も貰わずにタダでやっていますので・・。」
そこでまた、大きな怒鳴り声が責め立ててくる。
「だから、余計に悪いんだよ‼︎ 無料で占いなんかするから‼︎」
叶恵は思わず、自分の耳を両手で押さえた。火のついた勢いで、話し続けるおばさん。
「私はね、この商店街の先の所で、占い屋をやってるんだが。そりゃあ、良く当たる水晶占いだよ!これまで、たくさんのお客さんが来てくれて、商売繁盛だったんだよ!それがどんどんお客さんが減っていって、最近では一割ぐらいになってしまったんだよ!」
叶恵はやっと、事の成り行きが分かってきた。おばさんの文句は続く。
「私は、1回5000円って低料金で善良にやってるのに、アンタは無料だなんて・・・インチキ商売だろ!」
叶恵は納得がいかず、言い返した。
「いや、インチキなんかじゃありませんよ!それに言ったように、たこ焼きが本職で、占いは趣味でやってるだけです!」
おばさんは、更に叶恵を睨みつけてくる。
「それも、インチキだって言ってるんだよ!人を占うのに、趣味だって⁈ その気軽な気持ちがそもそも、占いをやる資格がないんだよ! 私なんか命がけだよ! 食べていけるか、どうか、っていう・・。」
それを聞いて、叶恵は呆れた顔をした。
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