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おばさんは、引き下がろうとしない。
「何だい⁈ その呆れた顔は? 私はもう20年も占いをやってるんだよ! そのうち、アンタには不幸が起きるよ!そうだ!死相が出ている。長くはないねえ。」
叶恵は、呆れたまま言い返した。
「あのう。そんな失礼な事、言わないでください! 死相だ、なんて・・。」
「とにかくさ、アンタは、たこ焼きだけ焼いていれば良いんだ! 占いなんて、辞めておくれよ!」
そう言い捨てて、おばさんは商店街がある方へと立ち去っていった。
叶恵は、とんでもない言い掛かりの苦情だと思い、カウンターで頭を抱える。
その後、顔を上げて呟いた。
「残念だけど、私の寿命はもう占ってるよ。92歳まで生きる長寿の運命。」
ここは、スーパーエブリィ。
外は日が暮れて真っ暗になり、街灯がついている。
その店内では、商品棚に品物を並べる貴志の姿があった。ワゴン車に乗った段ボール箱から、一つずつ商品を取り出していく。
その側を通りかかった人物は、山口 美咲である。
「貴志〜。何とか仕事、定時に終わりそう?」
一瞬チラリと美咲の方を見たが、また再び忙しそうに貴志は、商品を棚へと並べていく。
「ああ。まあ何とかな。」
「そう・・。」
美咲のその声を聞いて、いつもの活発な調子ではない事に気がつき、作業しながら貴志が聞いた。
「何だ、美咲。最近お前、元気ないなあ。」
貴志の側に、立ったままの美咲が答える。
「そお?・・・う〜ん。まあね。」
貴志はニカッと白い歯を一瞬、美咲の方へ見せて、また忙しく作業しながら言った。
「あ〜、もしかしてお前、男にフラれたのかあ?」
「はあ⁈ そんなんじゃないよ。」
美咲はそう言って、しゃがみ込んで仕事している貴志の後頭部を軽く叩く。
「じゃあ、何なんだよ、お前。」
貴志が、嫌そうな顔をして言い返した。
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