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居間では、三人がちゃぶ台を囲む。
とりあえず、コップの中のビールを飲んだ叶恵は、先程とは打って変わって機嫌良く、植松に話しかけた。
「はじめまして〜。修治の妻の、叶恵です。」
「あ、はじめまして。あの、本当にすいません。突然、夜に来てしまって・・。」
植松は、まだ申し訳ないという気持ちがあり、恐縮しながら謝罪する。
「もう、良いんですよ。さ、まあ飲んで。」
叶恵は、初めて訪れた植松を歓迎するかのように、修治が持ってきた瓶ビールを取り、植松のコップへと注いだ。
「あ、ありがとうございます。」
叶恵は、いつもの調子で植松に尋ねる。
「植松さん。まだ若いんでしょ? いくつ?」
「26です。26と、10ヶ月になります。」
当然のように、そう答える植松に、思わず叶恵は吹き出してしまった。
「26歳っていうのは分かったけど、10ヶ月は要らないでしょ。」
そう言われて、
「あ、まあ。一応、もうすぐ27になる、って事で。」
と植松は説明する。
「ハハ。植松くん。細かい性格なのね。」
叶恵は、愉快に笑った。
それを聞いていた修治が、植松にアドバイスする。
「おい、植松。細かい性格、って褒められたぞ。とりあえず、お礼を言っておけ。」
嫌味にも聞こえる冗談だった。
「あ、はあ。・・ありがとうございます。」
その通りお礼を言う植松に対し、また叶恵が苦笑する。
「植松くんて、面白いのね。」
頭を掻いている植松。すかさず叶恵が、話しかけた。
「それにしても26歳だなんて、まだ若いわねぇ。私の息子のような年齢ね。」
「は、はい。普段から秋原さんにも、父親のように、良くしてもらっています。」
植松は、必要以上に頭を下げながら言う。修治は、イカスルメを食べていた。叶恵が、少し呆れた顔で聞く。
「良くしてもらっている、って⁈ うちの人は、変わった人間でしょ〜?」
植松は、大きく顔を横に振った。
「いいえ〜。秋原さんには、本当に色々と教えてもらっています。研修所では、准教授ですし。」
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