ビードロのかけら

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「秋」 秋は切ない ピアノの音色すら切なく 紅茶染めのレースが似合うそんな季節 転がるキャラメル ラムネは小さな夏の忘れ物 針でちくちくとさされるような 心をきゅっとしめつけるような さりさりと静かにひっかかるような 透き通る灰色とセピア色のフィルターがかかったようなそんな季節 静かに佇むおもちゃ箱にふれるような 心に空白ができたような ざわざわとしたものに埋め尽くされるような 沈んでいくような そっと大切にされ続けてきた本のページをめくるようなそんな季節 全てが混ざって押しつぶされて泣きそうになる 頰をなでる風がきりきりと切ない サシェの香りが移った栞 小さな贈り物 優しい甘いミルクティー ミルクは心に流れる甘い空想の海 ほんのり痛くてほんのり甘い 秋は温かいセピア色の涙と小さな物語の季節 枯葉の音がさくさく 私の心もさくさく鳴った
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