ビードロのかけら

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「雨粒キャンディ」 雨をお砂糖でからめて煮詰めたら 透明の中で水の粒がきらきらと泡立つ飴ができる それはまるで星屑のようなきらめき 柔らかな針で刺すような痛み ほんのりと物憂げな甘さにきゅーっと胸が苦しくなる どこか懐かしい透き通る味 今の私と過去の私がすーっと溶けて重なり合う ひとしずくの涙 広がる心の水たまり 私という物語がひとしずくごとに詰められた 透明な瓶に透明な飴をそっと詰める 光に透かせば泡立つ 思い出と今の星屑たち 切なくも優しい甘さ その一つ一つを大切に抱きしめほおばって 私は私を透明にしていく 水たまりに新たなひとしずくをおとしながら 今の私を重ねていく
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