ビードロのかけら

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「ラムネ菓子」 お菓子のラムネはほろほろと溶ける清涼菓子。 頬張ると透明でどこか懐かしい気持ちを連れてきてくれる。感情で旅する清涼菓子。 その世界は季節によって姿を変える。 春はしゅわしゅわと淡く泡立ち、日向色の幸せが心に流れ込む。 夏は揺らぐ今と昔の境界。キラキラと懐かしい心の泡立ち。 秋は胸を優しく締め付ける忘れ物。透明な灰色、セピア色の涙。 冬は透き通る白いヴェールを纏っていて、溶けていく様子はまるで雪どけ。 その世界の中で、「今日」の心が揺れ動く。 ラムネ菓子を一粒頬張る。 ひと匙の痛みとともに、その一粒が柔らかく溶けていくように私の心もほどけていった。
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