8人が本棚に入れています
本棚に追加
「ラムネ菓子」
お菓子のラムネはほろほろと溶ける清涼菓子。
頬張ると透明でどこか懐かしい気持ちを連れてきてくれる。感情で旅する清涼菓子。
その世界は季節によって姿を変える。
春はしゅわしゅわと淡く泡立ち、日向色の幸せが心に流れ込む。
夏は揺らぐ今と昔の境界。キラキラと懐かしい心の泡立ち。
秋は胸を優しく締め付ける忘れ物。透明な灰色、セピア色の涙。
冬は透き通る白いヴェールを纏っていて、溶けていく様子はまるで雪どけ。
その世界の中で、「今日」の心が揺れ動く。
ラムネ菓子を一粒頬張る。
ひと匙の痛みとともに、その一粒が柔らかく溶けていくように私の心もほどけていった。
最初のコメントを投稿しよう!