ー 至 ー

1/1
前へ
/2ページ
次へ

ー 至 ー

【 弐 】 時に私は残酷になる。 とても残酷になる。 今はまだその変貌は誰にも気づかれてない。 …はずだ。 はず。 そのはず…だったはず。 私は今、走っている。 猛烈に走っている。 余裕など微塵もない。 相当にヤバい状態だ。 ヤツを隠すための必殺アイテム『天使』を ヤツは食ってしまった。 私の『天使』を食いやがった。 予備天使を纏おうとも時すでに遅し。 ヤツの姿を見られてしまった。 私の口から顔出すヤツの姿を。 もう、隠せない。 逃げるしかない。 走るしかない。 心臓が出るか、ヤツがでるか…両方かもしれぬ。 薄らぐ意識の中で悲鳴が聞こえる。 アチコチから悲鳴が聞こえる。 悲鳴の森を全力で走る。 まるで夢で体験するスローモーションのよう。 体が前に進まない。 走っても、走っても、全力なのにスローモーション。 私の姿がビル窓に映る。 もう、もう、この世のモノではない。 まるで、ミツクリザメだ。 いやいや、ミツクリザメのがまだマシだ。 ミツクリザメのがまだ一体感がある。 私の場合、一体感などない。 私の顔が頭が、パーカーのフードと化す。 ヤツが私というパーカーを着ている。 走る度、ユサユサと頭フードが揺れる。 そして私の頭があったであろう場所にヤツの頭が乗っている。 なんという奇々怪々さだ。 おぞましさ通り越し笑いが込み上げる。 そして、酔っぱらいオジサンのような蛇行走り。 まさに、お笑いである。 嗚呼、頭がイタイ。 喉も渇いた。 バファリン飲みたい。 はて、飲むのはどっち? そんな事を薄っすらと考えながら悲鳴の森を走る。 この先に待ち構える絶望という名のPOLICEMEN達に向かって。 そして、 私はワタシになる。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加