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ー 至 ー
【 弐 】
時に私は残酷になる。
とても残酷になる。
今はまだその変貌は誰にも気づかれてない。
…はずだ。
はず。
そのはず…だったはず。
私は今、走っている。
猛烈に走っている。
余裕など微塵もない。
相当にヤバい状態だ。
ヤツを隠すための必殺アイテム『天使』を
ヤツは食ってしまった。
私の『天使』を食いやがった。
予備天使を纏おうとも時すでに遅し。
ヤツの姿を見られてしまった。
私の口から顔出すヤツの姿を。
もう、隠せない。
逃げるしかない。
走るしかない。
心臓が出るか、ヤツがでるか…両方かもしれぬ。
薄らぐ意識の中で悲鳴が聞こえる。
アチコチから悲鳴が聞こえる。
悲鳴の森を全力で走る。
まるで夢で体験するスローモーションのよう。
体が前に進まない。
走っても、走っても、全力なのにスローモーション。
私の姿がビル窓に映る。
もう、もう、この世のモノではない。
まるで、ミツクリザメだ。
いやいや、ミツクリザメのがまだマシだ。
ミツクリザメのがまだ一体感がある。
私の場合、一体感などない。
私の顔が頭が、パーカーのフードと化す。
ヤツが私というパーカーを着ている。
走る度、ユサユサと頭フードが揺れる。
そして私の頭があったであろう場所にヤツの頭が乗っている。
なんという奇々怪々さだ。
おぞましさ通り越し笑いが込み上げる。
そして、酔っぱらいオジサンのような蛇行走り。
まさに、お笑いである。
嗚呼、頭がイタイ。
喉も渇いた。
バファリン飲みたい。
はて、飲むのはどっち?
そんな事を薄っすらと考えながら悲鳴の森を走る。
この先に待ち構える絶望という名のPOLICEMEN達に向かって。
そして、
私はワタシになる。
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