10月の幸福論

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10月の幸福論

『部活が終わって帰る時に尚斗の家に寄っても良い?』  下校時に月冴からそう言われ、連絡を待つこと数時間──時計の針は午後六時ちょうどを指した。    帰宅部で委員会活動のある日以外は、特別な用事がない限りほぼ直帰するため、「わかった」とは言ったものの時間を持て余し、帰宅してから二時間余りで読みさしの小説を一冊と、先日買ったばかりの小説を一冊、まるまる読み終えてしまった。  ベッドの上に置いたスマホを手に取り画面をタップするも、月冴からの連絡は来ていない。片付けに手間取っているのだろうか? 体育館の掃除に時間がかかっているのだろうか? 月冴が連絡をくれた後の〝理由〟をあれやこれやと考える。  考えれば考えるほど、どれも当てはまりそうで、いっそ「ボールやユニフォームの片付けに手間取って体育館の掃除が遅れて連絡が遅くなった」と言われるのではないだろうか──そんなことすら思う。  月冴がなぜ部活があるにも関わらず、わざわざ今日を選んで俺の家に寄ると言い出したのか── (明日が俺の誕生日だから、だよなぁ)  10月7日は俺の誕生日だ。それと同時に、母親の命日でもある。  高校に通いだしてからのことではないが、この日は母親の墓参りを優先しているため、休日以外であれば、学校を休むことにしているのだ。    付き合うという形が成立すると、なにかと気にされがちな記念日であるが、それはお互いの誕生日も例外ではない。俺が10月で月冴が12月──二ヶ月違いの誕生日。祝われるのは、俺のが先になる。
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