高藤課長の落としもの

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始業前でもちゃんと対応しますよ。ンンっと軽く咳払いをして、朝に相応しい爽やかな声を心がけ受話器を上げた。 「おはようございます!タクボ建設株式会社、営業三課です!」 『あ、もしもし、高藤さんいる?』 「すみません、高藤はまだ席に着いておりません。私アシスタントの藤崎と申します。宜しければ代わりに御用件をお伺いさせて」 『いや、高藤さんじゃないと。まだ来てないの?急ぐんだよ、ちょっと探してきて!』 「かしこまりました。それでは折り返し」 『だから、探してきて!折り返しなんて待ってられない。今このまま探してきて!』 私の返事を遮る様に話す声の主は、どうやら年配の男性。朝イチこんな早くに電話してきてこの話しぶり。名乗りもしないなんて、失礼極まりないけど、ここで「失礼ですがお名前を…」なんて言おうものなら、イライラに拍車がかかるだろう。素直に言う事を聞くより他ない。 「かしこまりました。少しお待ち下さい。」 保留ボタンを押して、メロディが流れたのを確認してから、高藤課長を探すべく事務所を飛び出した。
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