高藤課長の落としもの

9/13
前へ
/13ページ
次へ
タクシーを降りて驚いた。だってどこにも店らしきものが無い。二階建て、ファミリー向けの一戸建てが立ち並ぶ住宅街の一画だった。 「ここだよ。」 「ここ?…ここって……」 高藤課長の指し示す家は、白い外壁のごくごく普通の二階建ての一軒家。どこにも看板らしき物は見当たらない。あるのは『高藤』という表札だけだ。 「俺の実家。入って。」 そう言うなり、高藤課長は「ただいまー」と大きな声で言いながら玄関に入ってしまう。私も慌てて後を追った。 そんなっ、そんなっ、いきなりご実家にご挨拶だなんて。高藤課長、私まだ心の準備がっ………。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

39人が本棚に入れています
本棚に追加