「プレイボール!」

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「アンパイア、彼は…何を願ってゲームに参加したんだ?」 おそるおそる、アンパイアに尋ねてみる。 「はい。ピッチャーの方は、幼い頃より野球漬けの生活をされていて、このまま成長すればもっと才能を開花させられるはずでした…」 やはり。甲子園どころじゃない、彼が願ったのはプロの世界、いやもしかしたらもっと向こう、世界での活躍を願って挑戦したのか…俺なんかが自分よがりな願いをしてしまったから、大人気なく彼に勝とうなんて思ってしまったから。 「ですが、数年前から急性の病気に患わされ、今年の春ごろから急速に悪化、残りの人生が長くない状態となっておりました。そこでピッチャーの方が願ったのは、病気の全快。つまりあなたに勝って、普通の人間と同じ人生を生きることでした」 なんだよ、それ。そんなこと、こっそり先に言えよ…そしたら協力するに決まってんだろ。 「じゃ、じゃあ!あの少年は、もう病気が治ることは無くなったってことか?医者の診断どおりの余命で死んじまうってことか?」 罪悪感、怒り、悲しみ…いろんな数えきれない感情がいっぺんに押し寄せて、アンパイアの胸ぐらを掴みながら怒鳴ってしまった。 「痛いです、あまり派手な抗議は反則になりますよ。その質問に関しては、イエスとノー半々です。通常のルールであればあなたの仰るとおり、負けた方の願いは絶対に叶うことのない未来となって存在し続けます。が、ご自身であれ他人であれ、生物の寿命に関することを願い事にかけられ出場された場合は例外です。勝った場合はもちろん願いが適用されますが、負けた場合はその願いにかけられた生物の寿命がすぐに尽きるというルールになっております。これはもちろん、出場前に意思確認済みの事項になっております。なので今回の場合はさしづめ、あそこで停止させられているトラックが彼に衝突するような、ごく普通の事故として処理されるような流れになると思います、そこの管轄は私ではないので詳しくはわかりませんが。何より、本日はおめでとうございました。それでは…」 おい、待て…!ちょっと待て! 「ゲーーームセット!」
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