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第2話 間抜け面に寝ぐせを添えて
澄みきった空の下。
ウミネコの群れが、静かな海の沖合に浮かんで翼を休めている。
朝の穏やかな景色に彩りを添えていたウミネコ達が、飛沫を上げて一斉に飛び立ったのは、天敵が襲いかかってきたからでも、海が荒れ始めたからでもなかった。
彼らを追い散らしたのは、ただそこに忽然と現れて彼らを包み込んだ、青白い光。
日光が反射して煌めく海面の一部が、まるで塗り替えられたように、円形の膜が貼り付いたように、波の影響を受けず異質な揺らぎを見せている。
そこからゆっくりと浮上してきたのは、アシカでもイルカでもなく、人間の少女の頭に見えた。
鳴き声を上げ飛び交う白い腹を目で追いながら、少女は眩しそうに目を細める。
太陽に照らされ、明るい髪色は白くも見える。腰まで伸びた緩いウェーブが、ふわりとなびく。髪も肌も衣服も、どこも濡れてはいない。
「今日は、どうしましょう」
遠い陸地を眺める少女は、自分を支える生物の鼠色の背に腰を下ろし、硬い背びれに掴まっている。
「面倒がらないでください。雨なら昨日降ったでしょう」
ウミネコの群れが小さく遠ざかり再び訪れた静けさに、軽やかな鈴の音色が加わった。
「仕事に決まっているじゃないですか。資金集めのほうは頼みますよ」
一人と一匹は東京湾の方角へ進みながら、再び海に身を潜めた。
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