1.半年ぶり。

12/32
前へ
/79ページ
次へ
 男の目から、視線を下へずらしていく。形を戻した男の唇に、指でそっと触れる。  厚みはなくても、柔らかい唇。    わずかに開いた隙間に、中指と薬指を滑り込ませる……。と、すぐにコツリと男の歯に当たった。  男の目を見続けたまま、何も言葉を掛けなかった。(うなが)すことも、強制することもしない。    ただ、じっと見ていた。  それでも男の口は、ゆっくり開いていった。唇を、歯を、舌を、感じながら、指は奥へと進んでいく。  ()けるように、熱い口内。  男は、俺の指の根元まで、全てを受け入れた。  ぞくぞくとする快感が、血管を通って全身へ広がっていく。  
/79ページ

最初のコメントを投稿しよう!

84人が本棚に入れています
本棚に追加