1.半年ぶり。

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 視界の端。男の顔が、わずかに映る。 ――瞬間、くだらない悦などすぐに吹き飛んだ。  (かすみ)がかった、淡く甘い夢の世界から、どぎつい原色の現実世界に、一気に引きずり戻されたみたいだった。  あぁ、ムカつく……。  表情筋をどっかに忘れてきたみたいな、のっぺりした顔しやがって。その綺麗な顔を、くしゃくしゃにして、甘い声で鳴いてくれりゃ、クソ可愛くて(たま)んねぇのに……。  快楽じゃなくてもいい。もう、拒絶でも苦痛でも、なんでもいい……。  その顔を、めちゃくちゃに……、めちゃくちゃに、(ゆが)ませてやりたい……。
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