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――突然、男の体がびくんと大きく反応した。
何が起きたのか、俺は、何をしているのか……。
俺の歯は、何かに深く埋もれている。熱く、硬く、そして、柔らかい、何か。
……口の中に、男の首があった。
俺は、男の首に……、思い切り嚙み付いていた。
皮膚を突き破っているかどうかは、分からない。
でも、肉の中に、深く埋もれている。
いっそのこと、このまま男の首を、喰い千切ってやりたかった……。
無意識だった。
それでも、俺の頭ははっきりと分かっていた。俺に対し、男の心が動いたわけではないということ。
男の反応は、ただ痛みに対する体の反応っていうだけで、決して、心が動いたわけではないということを。
体を起こし、上から男を見下ろす。
敗北感に似た感情が、俺の苛立ちを、静かに増幅させていった……。
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