1.半年ぶり。

18/32
前へ
/79ページ
次へ
 男の細い腰を掴む。  骨に薄い皮膚を巻きつけただけの、細い腰。  うしろから体をぶつける。  どれだけ男を見下ろしたところで、たとえどんなに高い場所から見下ろしたところで、ケツを向かせたところで……、俺の苛立ちが消えることはない。  弓のように()った、さらりとした白い背中。  男の髪が、()ねるように揺れる。  うしろから体をぶつける。    何度も、何度も、何度も……。  それは、快楽や欲のためなんかじゃない。もちろん、愛なんてものも無い。  自分の中の苛立ちを、発散するためだけの行為。  ただ、それだけでしかなかった。  苦しい……。    目のまえに居る。確かに、男は目のまえに居る。  肉の感触、体温、(つな)がった体……。  それなのに、どうしてこんなに遠くに感じる。  どうしてこんなに、苦しくなる……。
/79ページ

最初のコメントを投稿しよう!

85人が本棚に入れています
本棚に追加