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1.半年ぶり。
ここ来んの、半年ぶりか……。案外、平気なもんだな。
口に咥えたタバコから、煙が真横に流れていく。
「うわっ、さっびー」
ダウンジャケットのポケットから出した手を、冷たい風が、躊躇なく突き刺した。
ピンポーン。
半年前と何も変わらない、マンション、ドア、インターホン。中から鍵を開ける金属音が、二回聞こえた。
「何?」
ガチャリと開いたドアの隙間から、男が言った。
あー、こいつ、半年前と、全然変わってねぇなー。
「よぉ。とりあえずさびーから、中入れて」
ドアの取っ手に手を掛けたままの男を、強引に押して、玄関の中へ入った。
「でっ、何?」
明らかに不機嫌そうな声。
「ちょっとさ、冷たくない? 半年ぶりに会う元彼に向かって、その言い方」
「だから、何?」
「ヤりに来た」
感情のない男の目を見て言うと、ブーツを脱ぎ捨て、「うわ、あったけー」独り言を言いながら、部屋の中へずけずけと入った。
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