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男の目が、動く。
ナイフで裂いたような細い切り口の中で、ガラス玉がこちらを向いた。
くそムカつく……。
マジで、ムカつく。こいつはなんも、変わんねぇ。ムカつくくらい、なんも変わんねぇ。
そのガラス玉のような、感情のない真っ黒な目。
ただ、そこにはめ込まれただけの目。
いつもそうだった。
上に覆いかぶさる俺を見ているようで、本当は俺を通り越し、真っ白な天井を……いや、その天井さえも通り越して、もっと遠くを見ているような目をしていた。
いつも、そうだった。
一度でいい。
一度でいいから、その目に俺を映したかった。
一度でいいから、その目に熱い感情を灯してみたかった。
一度でいい……。
一度でいいから、その目に俺を、映してほしかった……。
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