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「タバコ!」
うしろから、男の尖った声が聞こえた。
「で、どう?」
顔だけを向ける。
男は俺を素通りし、ローテーブルの前で止まった。
俺の目は、男の後頭部を見ていた。
真っ黒な髪を、耳の横まで高く刈り上げ、その襟足からすらりと流れるように続く、細く白い首。
舌がうずうずした。
「何がっ!」
男は振り返ると、手に取った灰皿を俺の目のまえに突き出した。前髪のすぐ下から、刺すような視線を向けながら。
「ヤれんのかって聞いてんの」
灰皿を受け取り、タバコの火を消しながら言った。
「ヤりたきゃ風呂入ってこいよ」
男の表情からは、なんの感情も伝わってこなかった。
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