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シャワーヘッドが勢いよくお湯を吐き出すと、風呂場いっぱいに、白い湯気が一気に立ち込めた。
黒字で「shampoo」と書かれた、透き通った黒色のボトル。頭を二回押す。
手のひらにのせた、とろりとしたシャンプーに鼻を近付け……舌打ちした。
相変わらず無香料使ってんのかよ。ったく、本当に色気のねぇ男だな……。
頭からシャワーを掛けながら、目の前を流れるお湯越しに、視線を湯船に向けた。少し膝が曲がるくらいの、一人で入るのに丁度いい広さの湯船。
ここに俺と男は、体を押し付けあいながら、何度も一緒に入った。つい昨日のことのように思い出せるのに、なぜか、酷くむかしのことのように感じた。
風呂から出ると、角をきちっと合わせて畳まれた、真っ白なバスタオルとフェイスタオルが、洗面台に置かれていた。それを当たり前のように掴み、顔をうずめる。
ほんのり洗剤の匂いがした。
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