1.半年ぶり。

8/32
前へ
/79ページ
次へ
 寝室のドアが開いた。  部屋へ入ってきた男のほうへ、顔を向ける。  乾ききっていない黒髪が、水を含んだ重みでまえに下がり、ただでさえ分かりづらい男の表情を、更に分かりづらくしていた。  それでも、男がにこにこと笑っていないことだけは、はっきりと分かった。  男は、風呂に入るまえと変わらない格好をしている。  黒の細身のパンツに、真っ白なシャツ。  ただ違っているのは、足元が裸足になっていることと、シャツのボタンが全て外され、前が全開になっていること。  そこから、男の白い肌が覗いていた。  ピッ。  小さな音が鳴り、部屋が薄暗くなった。 「もうちょい明るくしろよ。顔、見えねぇだろ」  顔をしかめた男の手から、リモコンを取り上げた。
/79ページ

最初のコメントを投稿しよう!

84人が本棚に入れています
本棚に追加